ネバダ州のジム・ギボンズ知事が「二つの刑務所を閉鎖し、3300万ドルの経費を削減する」と表明したのは、州の税収不足が明確になった昨年9月末のこと。約1000人の受刑者は七つある別の刑務所に移すことにした。
「不景気が長引けば、今後、犯罪者が増え、収容施設が足りなくなるのではないか」「州財政が破綻(はたん)寸前なのだから閉鎖はやむを得ない」――。承認を求めた州議会の意見は割れているが、知事は閉鎖方針を貫く構えだ。
今年に入って閉鎖された刑務所は、ニューヨーク、ミシガン、カンザス、コロラド各州の9施設に上り、今後ニュージャージーなど3州、3施設の閉鎖が決まっている。
いずれも経費削減が理由だが、そもそも受刑者数が多過ぎたという事情もある。
全米の受刑者は1988年には60万人だったが、2007年には153万人と、この20年で2・5倍に増えた。厳罰化を求める世論に押され、重罪で有罪判決を3回受けた被告を最高で終身刑とする「三振即アウト法」を導入する州が増えたことなどが理由だった。刑務所の維持経費は、20年前の約4倍の計470億ドル(約4兆6500億円)までふくらんだ。
だが、不況による財政難で、刑務所関連経費は真っ先に削減対象となった。
今年に入って3刑務所を閉鎖したカンザス州では、受刑者数を減らすため、矯正教育のシステムも抜本的に変えた。
これまでは、仮釈放者が再び犯罪を犯した場合はもちろん、保護司との面会を怠ったり、定職に就かずに家賃が払えなくなったりした場合も刑務所に戻していた。受刑者の約6割はこうした人たちだった。新制度では、仮釈放者にカウンセリングを行い、就職や家探しまであっせん、懲罰でなく社会復帰に軸足を移した。これで刑務所に戻る仮釈放者は35%減ったという。
ケンタッキー州では、凶悪犯以外で、禁固1〜5年の刑を受けた受刑者に対し、刑期自体を一定割合短縮する制度を始めた。
こうした傾向について、スタンフォード大のカーラ・ダンスキー教授(刑法)は「1980年代以降、各州は罰則ばかり重視しがちだったが、皮肉なことに財政難で更生面を重んじた本来あるべき姿に戻りつつある」と指摘する。
ただ、カネゆえに犯罪者を刑務所から早期釈放する傾向が強まれば、市民の不安が高まる恐れもある。
(2009年4月3日 読売新聞)
